第20章 (日+黒日)敗者の道 (捏造戦国)
ばさりと入口を跨いでずかずかと入って来た人物に、顔を上げた私は目を見張った。
同じだ。顔の作りが。
だけど私をここに連れて来た彼とはどこか違う。
黒い着物が妙に似合っていて。
それに何か違和感があって。
後に続いて私の知る彼が入ってきて、やはり別人かと知った。
「ほう」
男は私を見てにやりと笑った。
途端背筋に走る悪寒。
端正な顔立ちも柔らかそうな黒髪も白い肌も落ち着いた声も何もかもが同じようであるのに、その笑みは間違いなく支配者のそれ。
私を値踏みするように眺め、見下ろし、入ってきた彼に言った。
「菊よ、お前は矢張り見る目がある。上玉ではないか」
「兄上、彼女を怖がらせるのは止めてください」
「誰が怖がらせているというのです」
「兄上がですよ。…随分早いお越しですが交渉は終わったのですか」
「あぁ。ありったけの金と女と食い物を上納しろと言ってやりましたよ」
「毎度毎度力任せな事で」
「お前がまだるっこしいだけでしょうに」
黒い着物の男は床に座ると、うるさそうに舌打ちをする。
菊と呼ばれていた彼は私を見て苦笑した。私は困ったように彼と黒い男を見比べる。
一体、この人は。