第12章 (闇日)かごめ (戦争、血、暴力表現有)
気付いた時、周りは静かになっていた。
そこら中に人が倒れている中、私と菊の二人だけが生きていて。
菊は私を抱えて苦しそうに息を吐いた。
「気がつきましたか」
「き……、ごめんなさ…」
「貴女は馬鹿です!なぜ、それほど頑なに…吐いて楽になる情報ならば吐いてしまえば良かったのに…」
「すみません…」
「本当に馬鹿ですよ。こんなに傷付いて…!…………っ、私は、私が、不甲斐ない…!!」
唇を噛み締めて私を見下ろす菊は耐えるように唇をぎゅっと噛み締めて、今にも泣き出しそう。菊がそんな顔する必要は無いのに。
口を割らずにいたのは私の意地なのだ。だから、菊は。
怒られているというのに、無意識に私は笑っていた。
助けに来てくれたのが嬉しくて。
助かったというよりも、その事実の方が嬉しくて。
「…ありがと…、菊」
瞳を閉じる。
ややあって不意にぱたりと頬に落ちてきた滴。
私の頬を伝ったそれは、温かく塩の味がした。
震えた声が耳に小さく残る。
「生きていてくれてありがとうございます」
2014/