第13章 駄々
―――古城に戻り、質素な昼食を取り終えたナナシは、
エルヴィンに持たせるお弁当を作っていた。
朝エルヴィン達に皮を剥かせたじゃがいもを茹でて潰し、
その中に実家から取り寄せた肉と玉ねぎを細かく刻んで
調味料と共に混ぜ込む。
それを小判型に形を整え、小麦粉、溶き卵、パン粉の順に
衣をつけ油で揚げていると、後ろから逞しい腕が
纏わりついてきて「美味しそうな匂いだ」という
バリトンボイスが背後から聞こえた。
「・・・腕が邪魔だ。退け」
「酷いな。もうすぐ本部に帰らなければならない私の寂しさを
汲んではくれないだろうか」
「そんな寂しいと抜かすどこぞの小童に持たせる食べ物を
作っておるのだが?」
「あぁ、嬉しいよ。私の為に料理を作ってくれる君は
まるで新妻のようだ!」
「・・・・・・・・・・」
うっとりとそんな事を言うエルヴィンにゲンナリしながら、
ナナシは彼の手の甲を思い切り抓った。