第11章 流されてしまいそう
いつの時代も『内通者』や『裏切り者』のせいで
組織が瓦解してしまうものなのか・・・。
調査兵団を『迅鬼狼』の二の舞いにはさせたくないなと思う。
だが、こういった内通者の炙り出しはとても難しく、
賢いエルヴィンでも不可能に近いだろうと考えていた時、
エルヴィンはナナシに告げた。
「『内通者』の炙り出しはまだ出来ないが、
『内通者ではない者』の人選は行うことが出来た。
今度の壁外調査ではその人選をメインに作戦を立てる予定だ」
重大な情報を与えてくるエルヴィンにナナシは
眉を寄せながら苦言を呈す。
「・・・・私に、そんな重大な事を話してしまって良いのか?
もしかしたら、私が内通者かもしれぬぞ?」
安易に情報を漏らすべきではないと暗に告げると、
エルヴィンはクスリと笑い、ナナシの腰を掴んで力強く
抱き寄せた。
「君がもし内通者だったなら・・・私の見る目が無かった
という事だ。君がそうでない事を祈っているよ」
楽しそうに笑っているエルヴィンは、
毛ほどもナナシを疑っていないようだったが、
ふと何かを思いついたのか口許に弧を描く。