第10章 ナナシとの関係
久し振りに熟睡出来たエレンは心地よい朝を迎えていた。
気持ちも上がり、昨日まで鬱屈していた気分が嘘のように
晴れやかだった。
幼馴染のアルミンやミカサ以外でエレン自身を
受け入れてくれたのは、ナナシくらいだったような気がする。
ナナシに撫でられた頭に触れると、
まだあの温もりが残っている気がして
エレンはつい何度もそこを触っていた。
まるで母親に頭を撫でられたような感覚にエレンは
恥ずかしさを覚えたが、ナナシが与えてくれた安息を
天秤に掛けると、それすらどうでもよくなる。
今日行われる実験でどう態度が変わるかわからず
少し恐いけれど、ナナシならどんな自分も受け入れてくれるという
根拠の無い自信があった。
直感と言っても良い。
鼻歌を口ずさみながら身支度を整え、
朝食の準備をすべく厨房へ顔を出すと驚愕の光景が目に入り
エレンは硬直した。
「うぅ・・・眠い。何であたしがこんな事を・・・」
「黙ってやれ、ハンジ。私なんか一晩簀巻きにされた挙句に、
この状況だ。君はまだマシだ」
厨房で背中を丸めながらじゃがいもの皮を向いていたのは、
第十三代調査兵団団長エルヴィン・スミスと
分隊長のハンジ・ゾエだった。