第33章 夫婦というもの
「頼むから、私より先には死なないでくれ。・・・また
置いて行かれたら、私はきっと壊れる」
エルヴィンの頭を抱えながらそう呟くと、彼は一瞬息を呑んだ後、
また「わかった」と言い、ナナシの背中に腕を回して
慰めるように擦る。
「すまない・・・君を置いていく事が無いように努力すると誓う」
身勝手な願いだとはわかっていたが、それでも
置いていかれるのはもう御免だった。
ソロモンとエルヴィン両方に死なれてしまったら、
ナナシはもう生ける屍となってしまうだろう。
「あぁ・・・頼む。・・・もしも、お主が先に死んだら、
沢山の男と関係を持つからな?」
冗談めかしてそう言うと、エルヴィンは勢い良くガバッと
顔を上げ、必死の形相で「それだけはやめてくれ!」と
懇願してきた。
ナナシとしては本当に軽口だった為、エルヴィンの食いつきに
少し引きつつ、ふと悪戯心が湧く。
「なら、先に死ぬな。死んでからの文句は受け付けぬ。
・・・あぁ、あとお主が存命中でも私に無体な事をしたら
浮気するからな?」
「や、やめてくれっ!今回の件でも俺は死ぬ程苦しかったのに、
もう二度とやらないでくれ!」
・・・いや、お主が強姦紛いの事をしなければ問題無いんだがな。
これはまたやる気なのか・・・はたまた、無意識に襲って
しまう事を自覚しているのか・・・。
質が悪い男だなと改めて感じたナナシはツーンと顔を横に背ける。