第33章 夫婦というもの
―――数日後、エルヴィンは古城の前に立っていた。
数日間、様々な事を考えていたが精神的なダメージが強く
仕事にも支障が出る程になってしまい、
気づけばナナシのいる古城へ馬を走らせていたのだ。
まだ自分の考えが纏まらず、ナナシに何と言えばいいのか
わからない状態なのに、彼に会いたくて仕方なかった。
だが、古城まで来たものの、どう声を掛けようか迷ってしまい、
なかなか中に入る事が出来ないでいた。
舌戦では自信があるというのに、この体たらくとは・・・と
自嘲的な笑みを浮かべる。
ナナシの逆鱗に触れてしまった今、どんな顔をして会えば
良いのかわからなかったエルヴィンが、本部に戻ろうと踵を
返した時
「エルヴィン?」
と、恋焦がれた声に呼ばれ、動きを止めた。
振り返ればナナシが木の陰から現れ、エルヴィンの心臓が
跳ね上がる。
ナナシは何の躊躇も無くエルヴィンに近寄り、
その顔を覗き込んだ。