第5章 謎の新兵
「・・・・あれ?おまえ誰だ?」
厨房で黙々と作業していたナナシにそう声を掛けてきたのは
見た事の無い少年だった。
茶色い髪に意思の強そうな大きめの瞳を持つその少年は、
手に箒を持っていて誰かを探すように厨房の中を覗き込む。
「・・・ペトラさんかオルオさんがいると思ったんだけど・・・。
兵長はまだ帰ってないのかな?」
独り言に近い声量で所在なげに佇む少年にナナシは言葉を返した。
「ペトラは私の部屋の用意をしに行ったがすぐに戻ってくるだろう。
オルオは見かけてない。リヴァイは本部に行ってるから
まだ戻らないぞ」
「そう・・・なのか。・・・って、おい!いくら本人達が
いないからって呼び捨てはヤバイだろっ!?
目上の人や上司には敬語を使えって教わらなかったのかっ!?」
「え?」
少年が勢い良く厨房に入ってきてナナシの口を手で塞ぎ、
キョロキョロと辺りを見回し警戒する。
どうやらこの少年はナナシを彼と同じくらいの歳だと
勘違いしているらしい。
その反応が初々しくて面白かったので、
ナナシは誤解を解く事をやめ、少年に合わせる事にした。