第26章 迷い
――――二日後
調査兵団本部へ戻ってきたナナシは悶々としていた。
ハンジに言われたように、きちんとエルヴィンに事情を
話すべきだと思い立ったのは良かったのだが…
気持ちが先立ち過ぎて午前中から来てしまった事を後悔していた。
よくよく考えたら、ナナシが朝から尋ねていっても
エルヴィンの公務が忙しくて話し合いは出来ないし、
ナナシが本部にいると知ったエルヴィンが子供のような
駄々を捏ねて仕事を放棄しかねない可能性が出てきて、
ゲンナリする。
夜になるまでエルヴィンに見つからず時間を潰すかと
厩から動けず考えていた所に
「…ナナシ?どうした?」
と、馬の世話をしに来たミケに怪訝な表情で尋ねられた。
「…少しエルヴィンと話す事があってな…」
「そうか、なら早く行くと良い。エルヴィンは喜ぶぞ?」
「………いや、夜まで待った方が良いのではと考えていたのだ」
苦い顔をしながらナナシが考えているエルヴィンの暴走の
危険性を話すと、ミケはそれを真顔で同意した。
「そうだな。今までの事を振り返ればエルヴィンが仕事を
放棄しかねない。俺はナナシの意見に賛同する。…正直、
エルヴィンに仕事放棄されると兵団が立ち行かなくなるからな」
二人はウンウンと頷き合い、エルヴィンにはナナシがここに
来ている事は夜まで伏せる事になった。