第21章 男のロマン
――――翌朝
「ナナシ!酷いじゃないか!あれだけ乗り気だったのに
何故急に逃げたんだっ!?」
エルヴィンが食堂で朝食を摂りながらナナシを非難していると、
同じテーブルについていたミケとナナバは「逃げられたんだ」
と呆れた視線を向ける。
朝っぱらから大っぴらにそんな話題を持ち出さないで欲しい
という面持ちでエルヴィンとナナシを窺っていると、
額に青筋を立てたナナシがバンッとテーブルを叩いた。
「当たり前だろう!?あんな呪われた部屋でヤレると思う方が
おかしいわ!恐怖で一気に萎えたぞ!」
その一言でミケとナナバは「あぁ・・・」と何があったか
納得する。
ナナシがいなくなってからエルヴィンはモブリットの手が
腱鞘炎になるまでナナシの肖像画を描かせまくって、
壁や天井に飾っていたのだ。
エルヴィンの奇行にミケやナナバだけでなく、
リヴァイやハンジもドン引きし、いつしか仮眠室は
『狂気の仮眠室』として認識され絶対覗かないようにしていたし、
部下達にも絶対見られないよう配慮していた程だった。
肖像画の本人が見たら、さぞ恐ろしい光景だろう・・・。
ミケとナナバは心底ナナシに同情した。