The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第7章 Floor B4 ー地下4階ー
少し驚いたような表情の2人……。
レイが、静かな声音で私に訊ねた。
……自分の頬に触れてみて、初めて気づいた。
私は、泣いているのだと……__
私の体温よりも、少しだけ温度の高いその液体は、私の瞳から溢れて、零れて……。
もう止まりそうにない。
当の私は、何故涙が止まらないのか全くわからなかった。
『っ……。
どう、して……。』
「……悠。
私は貴女と一緒にここから出る。
……そしたら、ザックに殺されるの。
だから、泣かないで。
これは……、私自身が望んだことなの。」
私は、濡れた顔をレイに向けた。
レイの、無感情にも見えるその可愛らしい顔。
……その口から零れ出る言葉は、あまりにも虚しくて、悲しいものだった……。
だけど、強い意思を宿しているように見える。
私は、溢れる涙を必死に袖口で拭った。
「……ったく。
んなことでいちいち泣いてんじゃねぇよ。ガキじゃあるまいし……。」
『……五月蝿い。』
馬鹿にするようなザックの口調に、不機嫌そうに短くそう答えた私は、涙を拭いきってからレイに向き直った。
『……約束。
私は、レイと一緒に生きてここから出るの。
それまでは、ザックにも……誰にも殺させない。』
「……うん、約束。
じゃあ、行ってくるね。」
口元に小さく笑みを浮かべて、レイが言う。
「……おー。
さっさと行ってこい。」
『こっちでも、何か手がかりがないか……もう少し調べてみるね。』
亀裂の奥に、呑み込まれてしまうように入って行こうと自身の身体を滑り込ませたレイに、ザックと私が口々に言う。
……とその時。
ザックが「あ……。」と、小さく声を零した。
私とレイは、ザックを見つめた。