The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第5章 Floor B5 ー地下5階ー
「……やぁ、悠。
何を、見つけたんだい……?」
『……ああ、ダニー先生でしたか。
……その。
変な文章が壁に書かれたのを見つけまして……。』
少しだけ言おうかどうかを迷った私は、素直にそう告げた。
……ダニー先生は、薄く笑った。
その微笑みは、ゾッとするくらい…恐ろしかった……。
「……ねぇ、悠。
君の目も、とても綺麗だ。
……そして、とても不思議だ…。」
『……え?』
私は、ダニー先生のそんな脈絡の無い返答に戸惑ってダニー先生の方へと振り返った。
……その瞬間__
ーガッ……‼ー
『っ……!?』
一瞬……。
何が起こったのかわからなかった。
ものすごい衝撃が、私の右頬を捉えた。
"痛い"……だなんて、思うことさえも出来ないくらいの一瞬の出来事で、
続いてダニー先生は、私に向かって何か薬のようなものをスプレーで吹きかけた。
「……君の目も、レイチェルに劣らず美しい…。
君の目にも興味は十分にあるよ。
……でもね。
まずはレイチェルのあの目を、僕のものにしたいんだ。
だから、悠…。
君はしばらく、そこで眠っていて……?」
言ってからダニー先生はスタスタと歩いていく…。
その言葉と状況を、ぼーっとした頭の何処かで理解しつつも、私は必死に考えを巡らせた。
……レイチェルが。
あの娘が、危ない……。
…そうか。
この時の私の頭に、B6で見たあの言葉を思い出す。
ーフロアごとに似つかわしいものたちがいる……ー
あれは…。
あの言葉は……。
こういう意味だったんだ……。
薄れる意識の中、私はそんなことを考えた。