The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第23章 Escape -脱出-
「…あ。」
「申し訳ありません。
私が見つけた時には、既にこのような有様で……。」
セバスチャンの手から、レイの手に拳銃が渡る。
…しかし、レイの表情は晴れない。
「あったんだろ?
どうしたんだよ。」
浮かない表情のレイに、
ザックがそう不思議そうに訊ねる。
「……引き金が、壊されてる…。」
「……使い物になんねぇんだな?」
「……うん。」
『…仕方ないよ。
もう、行こう。』
レイの言葉に、ザックもそう言う。
肩を落として、明らかに落ち込んだ様子のレイを
励ますように私もそう声をかけた。
エレベーターに乗り込む一同。
私はエレベーターの壁に身体を預けて、
ゆっくりと瞼を閉じる。
セバスチャンは私のすぐ傍らに立ち、
暫し静寂の後……
レイとザックの会話が聞こえた。
「……お前。
あの地下で神父の奴に会ったんだろ?」
「…うん。」
「お前。
お別れがどうとか言ってたけど…。
……できたのかよ。」
その声が少し遠慮がちに聞こえた気がしたのは、
ザックなりの配慮なのだろうか。
…少しの間を置いて、
レイが静かにこう答えた。
「簡単になっちゃったけど、
…うん、大丈夫。」
「あそこにあったもん、
全部…お前のか?」
おそるおそる…
とでも言うような。
今までのザックとは全く違う印象を受ける
そんな声音だった。