The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第19章 Ray -レイ-
「…見たな。
見たんだな……?」
お父さんはお母さんからナイフを引き抜いて、
私にゆっくりと歩み寄ってくる。
ゆらゆらと揺れるように歩いてくる姿が、
異様なくらい恐ろしい。
「…俺はな、
最初から要らなかったんだよ。
ここにあるもの全部。
俺を不幸にするんだ……。」
「…………。」
「……だから、
お前も、
死んでくれよ…!!」
「…!!」
…逃げなきゃ…!!
キッチンを飛び出した私は、小さく呟く。
「…あぁ、酷い。酷い……。
…そうだ、子犬が…。
部屋に、行かなきゃ……。」
私は部屋の方へ駆け出した。
…廊下に出たところで、ふと足を止める。
「…そう言えば、
ここにお母さんが拳銃を隠してた……。
この時のため……?
……なら、私が持ってても良いよね。」
私が戸棚の引き出しをゴソゴソと漁る。
目当ての物は、すぐに見つけることが出来た。
「…弾、は入ってる……。
__あぁ…。早く、部屋に……。」
冷たい拳銃を握りしめて、
再び駆け出した。