The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第19章 Ray -レイ-
そんなレイに構わず
尚も同じ調子でダニー先生は話し続ける。
「……あのね、実は…、
僕の片目は義眼なんだよ?
生まれつき、片目がなくてね。
子供の時は、
母さんがそれを酷く気に病んでた……。
病んで、病んで……。
とても暗い瞳をしていたよ。」
長々と彼は尚も続ける。
彼のレイの眼球への執着はそういうことなのだろう……。
「暗くて、静かな目は……、
いつしか、子供の僕さえ
映さなくなっていった……。
……でも、僕は__
そんな母さんを愛してた。
その瞳が、いとおしかったんだ。」
「…………。」
「ねぇ、レイチェル。
…君は__
ご両親が憎かったかい?」
「……いいえ。」
「では、どうして……
切ったり、縫ったりしたのかな。」
「……。
__家族が、欲しかったの。」
「っ……!?」
レイは、そう言いながら微かに微笑んだ。
…その笑みは、背筋が凍りついてしまいそうなほど、
冷酷で、冷ややかなものに見えた。
……表情は微笑んでいるようにも見えるけど、
目が笑っていない…。