The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第16章 Floor B1 ー地下1階ー
「…………。」
『…………。』
「……ったく。
んだよ、レイのやつ。
突然倒れやがって……。
疲れてんのか?
……まぁ、無理もねぇけどよ……。」
静寂を先に破ったのは、
ザックだった。
蒼白な顔をして眠るレイを見下ろして、
戸惑ったような声をあげた。
『……それに、
レイは何をあんなに慌てていたんだろう。』
「……悠も、レイが慌ててるみたいに見えたか?」
『……うん。』
私の声に、ザックが訊ねてくる。
私は1つ頷いてそう答え、
それに同意を示したのだった。
『……妙に慌てて、
不自然なくらい、"何か"に怯えてた……。』
漠然とした"何か"……____
その"何か"が何を指し示すのか、
いったい何なのかは、サッパリわからない。
……だが、
レイのさっきの様子が
とても不自然だということはザックも気づいていたらしい。
「ああ、ちくしょう……。
ここに来て、絶望したような顔しやがって……。
……今更こいつがそんな顔しても、
面白くねぇ。
…………。
"私の神様"って、俺のことか?
……ああ、なんだこれ……。
……胸くそわりぃ……。」
レイを見下ろしたまま、
ザックが不機嫌そうにそう言った。
-カサッ……-
『……あ。』
「……あ?
んだこれ……。」
小さな音を立てて、レイの鞄から零れ落ちた紙を、
ザックが拾い上げる。