The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第14章 Floor B2 ー地下2階ー
そんな2人の様子に、
私も口を開いた。
「……ザックもここに残っていて。
ザックも怪我をしているから。」
いくら、あの女に応急処置をしてもらったとは言え、
腹部の大きな傷も、脇腹とふくらはぎからも、
じわり…と、血が滲み出ていた。
「あぁ?
俺が、足でまといだって言うのかよ。」
「……そうじゃない。
ただ、その方が効率的なの……。」
不服そうなザックにそう答えると、
ザックは、更に不服そうに顔を歪めた。
「あぁっ!?
それ、遠回しに"足でまとい"って言ってんじゃねぇかよ‼
ふざけんなっ‼」
そんな風に叫ぶザックに、
私は少し考えてこう言った。
「……ここに残って、
悠を守ってあげていてほしいの。
悠は動けないから、
まだ動けるザックが、傍に居てあげたら……
安心すると思うの。
……お願い、ザック。
ここで、悠を守って……。」
「……。
…………言われなくても、
そのつもりだよ。」
「……ありがとう、ザック。」
「あぁ?
……別に、お前の為じゃねぇよ。」
私の懇願するような声に、
ザックはしぶしぶ……といった様子で了承してくれた……。
「……では、
参りましょうか、レイ様。」
「……うん。」
セバスチャンの声に、促されるようにして、
私達は奥に進んでいく。
怪我をしてしまった悠とザックに
後ろ髪を引かれながら、
私達は、"B2"の最初のドアを押し開けた……。