The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第12章 Master and servant ー主従ー
「……だから、
殺すのも殺されるのも……、
ザックと私の意志だよ。」
レイの力強いその言葉に、
ザックは一瞬きょとんとして、目を瞬かせた。
「…………はははははっ‼」
ザックは、
正気を取り戻したかのように……
大きな笑い声をあげた。
「……おいレイ。
今になって、ちょっと面白いこと言ってんじゃねぇーよ。
あぁ、もう我慢できねぇ‼
なぁ、せめて笑ってみろよ‼
今すぐ……‼」
ザックの笑いの混じった声に、レイが微かに動く。
……笑っているのかどうかは、こちらからは全くわからない。
「…………下手くそ。
……ほんと、目が死んでんだよ、お前は……。」
ザックは、呆れたように笑った。
「……でも、
それが本物になったら……最高だ。
そのお前を殺す想像をしただけで、
俺は誰よりもいい顔になれるぜ……?」
ザックはゆっくりとレイから鎌を離して、
静かに言い、自身の鎌をじっと見つめた。
……何を、するつもりなの…?
心臓がバクバクと五月蝿く脈打つ。
嫌な予感に、背筋にヒヤリ……としたものが走る。
「……自分で自分を、
殺っちまえるくらいにはなぁ……!?」
その刹那……。
ザックは自ら、
自身の腹部に鎌をあてがい、
思い切り、腹部を切り裂いた……。
『……!?』
「ザック…!?」
気配を消していたセバスチャンさえも、
驚いたように目を見開く。
……彼からすれば、
欲望の塊である"人間"が、そのように自分を傷つける……。
自傷行為、は…
理解できないのだろう。