The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第11章 Floor B3 ー地下3階ー
「……マグショットって何だ?」
ザックがレイに訊ねる。
レイは答えようと小さく口を開けたが、
声を発するその前に、女性が甲高い声をスピーカーから響かせた。
《罪を犯した人間を撮影した写真のことよ、ザック。
ああ……あなた、1度も撮られたことがないのね。
……素敵‼
私、その写真を大切に保管しておいてあげるわ……‼》
機嫌良さそうに言う女性とは裏腹に、
レイの表情は不機嫌そうに曇ってしまった……。
私は困り果てて、
女性が見ているらしいモニターに映るであろう映像を
撮っているらしい、1台のカメラを見上げた。
今までに何台ものカメラを見かけたが、
それはきっとこの女性が見るためなのだろう……。
《あら、悠……。
そんな顔をしないで頂戴?
せっかくの美人が台無しよ?
私、あなたのこと結構気に入ってるのよ。
あなた、中々面白いから……♪》
私の視線に気づいた女性がそんなことを言う。
……私は嫌になって、視線を地面に落とした。
《ふふ…。
あ、そうそう。
……レイチェルや悠、そこの紳士も
マグショットを撮ってね?
せいぜい、それらしく写って頂戴。ちゃーんと、ネームボードと一緒にね。
……あぁ、
紳士のものは急場だったから急いで作ったのよ。
字が汚いだなんて、思わないで頂戴ね。
ちゃんと言うことを聞かないと、
次の部屋には行けないわよ。》
女性は口早にそう言った。
私とレイは、女性のそんな言葉に顔を見合わせて、肩を竦めた。
…………なんだか、
よく知らない人間に、自分の名前を呼ばれるのは……、
少し妙な気分だった……__