The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第10章 Butler ー執事ー
「……主人がお世話になりました。
セバスチャン=ミカエリス……と、申します。
アイザック=フォスター様、レイチェル=ガードナー様…。
以後、お見知りおきを……。」
そう言ってから、セバスチャンは恭しく丁寧に一礼した。
「……セバスチャン……さん…。」
「…………。」
レイがそっとセバスチャンの名前を呟いた。
ザックは…と、いうと……。
何故か無言でセバスチャンを睨みつけている…。
……セバスチャンも、ザックに対抗でもするように、
口元に穏やかな微笑みを浮かべたまま、
ザックをじっと見つめていた。
……仲がよろしいことで…………。
『……じゃあ、もう行こう。
もうここに居座る必要はないんだから…。』
澱んで、ピリピリと殺気立ったような空気を入れ替えるかのように、
私は努めて明るく言った。
「……うん。
行こう。」
私の言葉に、レイが淡々とした落ち着いた声音で言う。
「……ええ。
では、行きましょうか。
ガードナー様……私が鍵を開けて、エレベーターを起動させて参りますので、鍵を下さいませんか……?」
「…………レイでいい。」
レイは、跪いて自身に目線をあわせたセバスチャンに、
そう言いながら鍵を渡した。