The Anjel ー殺人鬼と悪魔に魅入られた人ー
第8章 Device ー仕掛けー
『至って普通だよっ‼それがっ‼
おかしくて、変人なのは、そっちだから…っ‼‼‼』
「何処がだよ……っ‼」
『全部だよ‼』
「……あぁ?
何だと、テメェ……。
上等じゃねぇか、もういっぺん言ってみろ。」
『ザックの変人……っ‼』
「っ……。
テメェ……っ‼」
私とザックが大人気なく、2人で声を荒らげて、
とうとう殴り合いにでもなろうか……____
そうなりそうになったその瞬間…__
レイが、小さく私達2人の服の袖を引いた。
「……ザックが知りたがっている。
悠が良いのなら、私が読む。」
レイの、そんな静かで落ち着いた口調に、幾らか落ち着いた私は、ふっと息を吐いてからレイに向き直った。
『……私は、
所々、記憶が欠落し、抜け落ちてしまっている……。
……私も、知りたい。
……だから、
レイが読んでくれるのなら、是非……読んでほしい。』
私の真剣味を帯びたそんな言葉に、
レイは1つ頷いた。
……それを願った当の本人であるザックは、
怒りのやり場にでも困ったのか、少々決まりが悪そうに自身の頭をガリガリと掻いていた。
……レイが、
紙を自分が読めるように正面に構えて、
ゆっくりと、大きく、深く……息を吸った。
その息遣いが、その沈黙で征された空間では、
やけに大きく聞こえた……____