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【鬼灯の冷徹】短編集

第4章 (鬼)紅玉の夢



家に着いた私は、荷物を手早く片付けるといそいそと例の鬼灯の置物を床に置いた。
まだ新聞紙にくるまれている。それを疾る気持ちを押さえられないまま破き、ぐしゃぐしゃっと丸めて屑籠へ。

「きれい…」

私の家にやってきた鬼灯飾りは、揺れながら相変わらず美しい輝きを放っていた。
橙の石が光を弾く。そっと触れ、そういえばこれは何の石なんだろうと考え、私は身をかがめて石を覗きこんだ。

瑪瑙かと思ったけど、少し違うみたい。白や濃い茶をした縞模様が無い。
籠の中の石は原石よりは多少磨かれているようだったが、丸いなめらかな形をしているわけではなく、ごつごつとしてさざれ石のようだ。揺れて転がるとからからと音を立て、きらきらと宝石のように光を弾く。

まあ石の名前は正直何でもいい。これが瑪瑙じゃなかろうが、安い石だろうが、ガラスだろうがプラスチックだろうが何だろうが、私はきっとこの鬼灯が好きだ。


綺麗に拭いてやろうかと思ったがそれほど汚れてはいなかった。私は鬼灯の籠をさやさやと撫でて、持ち上げる。
窓際の棚の上に置くと、外の光を受けて一段と明るくなる石たち。本当にいいものを買った、と少しこれを見つけた自分を誇らしく思う。

満足して息をつき、何か飲み物を入れようと立ち上がった。
その時だった。

…かん、ころろ、ぽた、と。
何かが落ちる音。

「…え?」

振り向くと、床に敷いたカーペットの上に橙色の石。間違いなく鬼灯飾りの中にあったものだ。
初めは純粋な疑問だった。おかしいな、石が落ちるような隙間はなかったはずだけど。そう思いながら鬼灯飾りに視線をやる。
そして私は今度こそ驚いた。

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