第2章 ドS彼氏、本性現れる
「…んぅ!?」
突然起こった出来事に私の思考はついていけなかった。
驚いたのもあったが、それ以上に恥ずかしさがあったため、私は大きく見開いていた目をぎゅっと閉じた。
まだなくならない温かい唇の感触。
そしてどんどんと加速する胸の鼓動。
こんな経験は初めてだった。
「……ん……」
どうしよう……息が出来ない……
苦しくなってきたその時、やっと彼の唇が離れた。
「……はぁっはぁ……しゅ、愁夜…くん……?」
私はこんなに息が乱れているのに、彼は余裕そうな顔で笑っている。
「……どうだった?初めてのキスの味は。
…ははっ。……苦しそうだな…。しっかり鼻から息吸わないとダメじゃねぇか……」
彼は私の耳元へと顔を移動させ、ゆっくりと囁く。
「……もっとされたいか……?
その顔、スゲェそそるんだけど……」
「……っ!」
その妖艶な囁きに私の身体はビクッと反応してしまう。
私はいつもと違う彼にただ戸惑うばかりだった。
あまりの恥ずかしさに私は顔をそむける。
しかし、顔へと伸びてきた彼の手が強引に正面を向かせ、嫌でも彼の顔を見る体制になってしまった。
「…愁夜…くん……」
「…もっと俺に夢中になればいい……
俺のことしか考えられないくらいに、な……」
「……あっ…」
彼の手はゆっくりと下の方へ下がっていき、私の首筋をすうっと撫でる。
くすぐったいのを我慢して私は言葉を発した。
「もうとっくに、私の中は愁夜くんでいっぱいだよぉ……」
私の目には少し涙が溜まっていて、彼の顔がぼやけて見える。
いつもは優しくて私を笑顔にしてくれる彼。
そんな彼が今は別の人物のように見えてきた。
……初めて、彼が怖いと思ったから。