第4章 ドS彼氏、教える
「…何で、俺のこと避けんの?」
彼はこの近い距離のまま、言葉を発する。
唇同士が触れそうな、この距離で。
「…な、何でって……」
声が震えてしまう。
…上手く、話せない。
「……ねぇ、何で?」
彼は私の腕を掴んだまま、身体を離した。
しかし、
─ドンッ
ほっとしたのもつかの間、私の身体は教室の壁に押し付けられた。
「ほら、言ってみなよ。
…俺を避ける理由を、さ」
両腕を彼に押さえつけられていて、逃げることが出来ない。
私は震える声で一生懸命、言葉を紡いだ。
「…こ、怖いの……」
「…俺が、か?」
愁夜くんが、怖い……?
……いや、それは違う。
私が恐れているのは──
「……違う…。
私の知ってる愁夜くんが、だんだん違う人みたいになっていくのが、怖いの……」
私は愁夜くんを
明るくて
優しくて
愛する人を大切にする。
そんな人だと思っていた。
……でも、
「愁夜くんは、私と付き合い始めてから変わっちゃって……。
今の愁夜くんはっ、私の好きな愁夜くんじゃないよっ!」
私は、いつも優しい愁夜くんが好きだった。
だから私は、優しい彼とは違う今の彼を避けてしまったんだ。