第3章 ドS彼氏、手当てする
「…………っ!!」
立ち上がった瞬間、足に痛みが走る。
きっとひねってしまった足首からだ。
でも、このくらいなら大丈夫…………。
私は痛む足に出来るだけ負担をかけないように走った。
決して速いとは言えなかったが。
……ガラッ
保健室のドアを開けて廊下に出る。
愁夜くんが追って来る気配は全くない。
2人の男子達はいきなり出てきた私に少し驚いていたようだったが、今は無視。
私は彼から出来るだけ離れるように、必死に足を動かした。
「っは、はあっ……」
静かな廊下に私の走る音と荒い息をする音だけが響く。
……さっきの彼は、あの時と同じだった。
__まるで別人。
あれは違う、彼ではない、と信じたかった。
……でも……
『…その怯えた顔、最高……』
あれは、彼の"本性"だと。
彼はかなりの"ドS"だと。
今日、確信してしまった。
そしてもう1つ、あの時と同じことがあった。
『……何でこんなにドキドキしてるの……?』
それは私の気持ちだった。
彼を怖いと思うのに、なぜこんなにもドキドキするのだろうか。
彼のことが好きだから……?
いや、それもあるかもしれない。けど……
……もっと違う、何かがある気がする……
今の私には、その答えを出すことが出来なかった。
これから私達は、今までのようにいることが出来るのだろうか。
これから私は、今までのように彼と接することが出来るのだろうか。
そして彼は……
まだ私のことを好きでいてくれるのか。
私は沢山の疑問と沢山の不安を心に残したまま、校舎の外へ出た。
……足の痛みなんか忘れてしまうくらいに胸が凄く痛かった。