第3章 ドS彼氏、手当てする
「はぁ…その怯えた顔、最高……。
…ほら、もっとよく見せろよ……」
彼は私の耳元で囁く。
思わず身体がびくっと反応してしまう。
…………熱い。
汗が一滴、頬をつたう。
さっきの冷や汗とは違う、熱い汗が。
怖いはずなのに、なんで……?
なんでよ…………
「ほら…さっきみたいにさ、甘い声出せよ……な……?」
彼の手が、私の体操服の襟にかかる。
_その時だった。
「…うわ、やべぇ…。ハンパねぇ量の血が出てんじゃん……」
「ほんと、お前ってバカだよなー。まさか、二人三脚で思いっきり転ぶとは思わなかったよー」
保健室の外から男子二人の声が聞こえてきた。
会話の内容からその二人はきっとこの保健室に入ってくるだろう。
「…チッ……他に人が来るとはな……。しかもよりによって“アイツ"だなんて……」
不機嫌そうに彼は呟く。
アイツって、誰のことだろ……?
…いや、そんなこと考えている場合じゃない。
今はここから逃げなきゃ。
「…っ……!」
「っおい……」
彼の力はさっきよりも弱くなっていたので、けっこう簡単に彼から抜け出すことができた。
そして私は素早く身体を起こし、ベッドから立ち上がった。