第3章 ドS彼氏、手当てする
「何してんの?早く舐めろよ」
彼は私の耳元に顔を移動させて、いつもより低い声で囁く。
普通、この距離だとドキドキするのに、今は恐怖心しかない。
「……い、嫌…………」
「"嫌"じゃねぇだろ?……さっさとしろよ」
鋭い彼の目が私をギロリと睨んだ。
恐怖心が身体の中からどんどんと押し寄せてくる。
……怖い。…もう、やるしかないの…………?
「……っ……」
私は震える手で彼の手を取り、傷をゆっくり舐め始めた。
舌から伝わる血の味はよくわからない。
舐めきれなかった血が、私の指についてしまった。
なに、これ。変な感じがする。
こんなの、普通じゃないよ…………
「くくっ……。お前の舌、熱いぜ…。
……ほら、手ぇ貸せよ」
ぐいっと私の手首を掴んで引っ張ると、彼は私の指についた血を舐めとった。
「…………っ!!?」
彼の舌が触れた瞬間、背筋がゾクゾクッと震える。
「っは……。さらに舌が熱くなった……。
……お前、俺の舌で感じてんだろ……」
「別に、感じてなんか…………っ!」
舌を傷から離し顔を上げると、彼の顔がすぐ目の前にあった。
「そんなえろい顔して、感じてないわけねぇだろ。……んっ…」
「んん…………」
そして、お互いの唇が重なった。
後頭部を手で押さえられているので、逃げることが出来ない。
熱くとろけそうな甘いキスに、私は夢中になっていた。
あ、ヤバい……。頭がぼーっとしてきた……。
私は彼のジャージをぎゅっと掴み、身体を支えていた。