第3章 ドS彼氏、手当てする
手当てが終わった愁夜くんは私の隣に座る。
彼の重みでベッドが少し沈んだ。
私はふと、あることに気がつく。
「…あ、愁夜くんの腕、傷ができてない?」
彼の左腕には、何かで切ったような傷ができていて、血が少しにじんでいた。
「あぁ、これか。さっき、木か何かに引っかけたみたいで、少しいてぇとか思ってたけど…。あー、血ぃ出てる」
「消毒しようか?」
彼は傷を見ていたけど、すぐに何か思いついたような表情をした。
そして、ニヤリと笑う。
「………っ!?」
彼はうつむいていたのでよく見えなかったが、この笑みには覚えがあった。
そう、あの時の__
『今から、たっぷりお前をいじめて、俺のこと教えてやるよ……』
屋上で起こったあの出来事の時に見せた、彼の不敵な笑み。
今の彼の表情は、まさにそれと同じだ。
「しゅ、愁夜くん、どうした__」
「なぁ、消毒してくれるんだろ……?」
彼は私の言葉を遮り、顔を上げた。
ドクン、ドクンと胸の鼓動が嫌な音を立てる。
冷たい汗が一滴、背中をつたう。
次の彼の言葉で私の身体は、一瞬にして凍るように固まった。
「…じゃあさ。この傷、舐めろよ」
口角をさらに上げた彼は左腕を私の前に差し出した。
「舐めときゃ治るってよく言うじゃん?
…だからさぁ、お前の舌で治してみせろよ」
ドクッドクッドクッと、さらに速くなる胸の鼓動。
舐めるって、そんなの無理だよ……
そう思っている時も、彼の傷からはどんどん血が流れていた。