第3章 ドS彼氏、手当てする
「…なーに笑ってんだよ。
…あ、そういや……」
彼は何かに気付いたような表情でこちらを見てきた。
しかし、すぐに視線を下に落とす。
「お題って、一体何だったんだ?」
彼が見ていたのは私の手に握られているお題が書かれたカード。
私は書いてあるお題が見えないように裏返しにして持っていた。
「……おい、見せろよ」
「! だ、だめ…………!!」
伸びてきた彼の手から逃げるように手を避けるが、この状態では自由に身動きが取れないため__
「あっ…………!」
__カードはあっさりと彼の手に渡ってしまった。
「ん、どれどれ………」
………うぅ……恥ずかしいよ……
だって、そこに書いてあるのは………
「………………"好きな人"?」
彼は少し驚いたような顔をしている。
うわぁぁ………!見られてしまったぁぁっ……。
私は赤くなった顔を隠すように、両手で顔を覆う。
すると彼は、私の気持ちを知ってか知らずか、いきなり笑い出した。
「はははっ!……別にそんなに赤くならなくても、俺達付き合ってるんだし。もっと堂々としてろよ」
「う……。だ、だってぇ……」
私は指と指の間から彼の表情をうかがう。
彼の口角が少し上がっているのが見える。
「っていうかお前、ほんと素直だよな。
"好きな人"って別に異性じゃなくてもいいのに、わざわざ恥ずかしい思いして俺を連れていくんだからな」
彼は少しからかうような顔で私を見てきた。
そして私はやっと気付く。
……あ、そっか。"好きな人"って、異性っていう指定がないから、女の子の好きな友達でもいいってことか。
…………でも
「"好きな人"って思い浮かべたら、真っ先に出てきたのが、愁夜くん……だったから……。
だから、私は愁夜くんを連れていったんだよ…………」
あぁ、何言ってんだろ私。
めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど。