第105章 恋した記憶、愛した事実《26》家康side
「??……家康?どうした?」
ズキン…っ!!ズキン…っ!!ズキン…っ!!
光秀さんが呼び掛けるが、あまりの痛さに返事が出来ない。
引かない痛みに耐えながら、ちらついた彼女のことを考える。
「(………今の彼女…………何かが……違った…?)」
姿は紛れもなく彼女自身だ……
花が咲いたみたいな笑顔も、一度見たことがあるし……
俺の名前を呼ぶ、嬉しそうに弾んだ声だって………
「(………名前………呼び、捨て……?)」
『家康、さん………』
違う……。彼女は、呼び捨てでなく、さん付けで俺を呼んでいる……
でも、彼女が俺の名前を呼ぶとき、いつも少し間があって、どこか辛そうで………
それがすごく違和感だった………
一瞬ちらついた彼女の方は呼び捨てだけど、なんだかその方がしっくりきて…………
「……………………陽菜………?」
自分でも聞き取れるのがやっとの小さな声で、彼女の名前を自然と口にしていた………