第103章 恋した記憶、愛した事実《24》混合目線
「………俺さ……前にも言ったよね…」
「え?」
家康のため息混じりの声に、俯けていた顔を上げると、家康が柱から背を離して私の方へと近づいてくる。
そして、私の前で立ち止まると………
「……あんたはそういう顔より………」
言いながら家康の片手が私の頬、反対の手が顎に触れ………
「……笑った顔の方がいいって……言ったでしょ……」
そっと顎を持ち上げて
顎を持ち上げた手の親指を伸ばし
その親指で私の下唇を柔く押しながら
真剣な表情で………そう言った。
「(……家、康…)」
家康のこの行動に
ドキドキ……と心臓が高鳴り
鼓動も速くなっていって
ジワジワ……と顔が熱くなってきた。
「………わかった…?」
どう反応していいのか、何て言えばいいのかわからなくて、そのまま固まっていた私に、家康は真剣に聞いてくる。
「………は……ぃ…」
震えて…小さく掠れた声。
だけど、家康はこの返事に納得してくれたのか、少し口元を弛めて、私の頬と顎から手を離した。
手が離れると同時に、家康の顔がなんだか見れなくて、視線をそっと家康から外し、赤くなっているであろう顔を見られないように少し顔を俯ける。
「(………顔、熱い……)」
家康に触れられたところは、特に熱を帯びている気がする……
それを確認するように、家康に触れられた頬に、手を充てた。