第103章 恋した記憶、愛した事実《24》混合目線
《姫主side》
「…………家康、さん……」
広間を出ていった家康を追いかけたけど、かなりの早歩きだったのか、広間を出たときには家康の姿はなく、思いの外見つけるのに時間がかかった。
もしかしたら、あのままもう御殿に帰ったのかと思っていたから、家康を見つけれて本当にホッとした。
廊下の柱に背中を凭れさせている家康は、月を見ていたのか、顔を上げている。
小さく呼び掛けると、ゆっくりと私の方へ顔を向けてくれた。
「………………何」
家康の声は、怒っているでもなく、至って普通の声。
信長様のことをかなり睨んでいたから、怒っている声で返事されるかと思っていたけど、普段通りの声で少し驚いた。
「っ…あ、あのっ!……さっきは……助けて…いただいて、ありがとう…ございます。」
助けてくれたお礼を言って、頭を下げる。
「………別に……それより………いつもあんなことされてるの?」
「え?」
家康の声に頭を上げるが、何のことかわからないので首を傾げる。
それを見た家康は、盛大にため息を吐くと、ゆっくりと口を開いた。
「………光秀さんや信長様たちに……いつもあんなにベタベタ触られてるの?」
「え?…………えっと……揶揄われたりすることはあるけど、ベタベタ触られることは……」
言いながら、今までの皆の行動を思い浮かべる。
頭は撫でられたりはあるけど、これはベタベタ触ることにはならないし……
たまに、信長様や光秀さんや政宗が、揶揄ってくることはあるけど、いつも家康がすぐに助けてくれてたから、これもベタベタではないような気もするし……
「………ベタベタ触られることは、ないような気が……?」
そう答えると、またしても盛大にため息を吐かれた。