第10章 動き始めた恋心〈8〉
「陽菜……」
「?なに?」
「救護……初めてにしては、頑張ったんじゃない…」
え…
「お疲れ」
そう言って
優しく
頭を撫でてくれた。
「………ありがとう…」
赤くなった顔と涙が出そうな目を見られるのが恥ずかしいから、思わず俯いた。
嬉しい
好きな人に褒められることが、こんなにも嬉しいなんて
初めて知った……
「家康のおかげだよ…」
言いながら、涙が目のふちに溜まり
「別に…あんたの頑張りでしょ」
家康の指が、涙をそっと拭ってくれた。
素っ気ない言い方だけど、声やしぐさに優しさが滲み出てるのがわかった。
「戦に勝ったし、負傷兵達の手当ても一通り終わったし、そろそろ帰支度しときな。帰支度できたらもう安土へ戻るし」
「うん」
こうして、陽菜の初めての戦場は織田軍が勝利し、陽菜はいろんな嬉しさを噛みしめて、皆と安土へ帰っていった。