第90章 恋した記憶、愛した事実《11》
家康が、夜着に袖を通している間に、使った薬などを片付ける。
「(……あ、そういえば、頭の怪我は自分で手当てしたのかな…?)」
部屋に入ったときは、自分で、腕部分の怪我の手当てをしていたけど……
手当てしたか確認したいが……でも、話しかけたら迷惑なのかも?とか考え、完全に片付けしている手が止まる。
頭に巻かれている包帯を、チラチラと見ると
「………さっきから何?」
「っ!!」
家康から、不機嫌全開の声で、声をかけられ、ビクッと肩が跳ねる。
「さっきから人の顔を、ちらちら見て……何?」
「す、すみません!!あ、あのっ……頭の怪我は、手当て、されましたか……?」
聞かれたから、これ幸いにと、頭の怪我の手当てをしたかどうかを家康に確認する。
「……頭は、まだしてないけど…」
「な、なら、頭の怪我の手当てをしたら、退室しますっ!!」
片付けていたのを止め、急いで、頭の怪我に合った薬を取り出し、手を清めていると
「別にいい……頭なら両手使えるし……」
「え……あ、でも………」
怪我がどこにあるか見えない分、やりにくいだろうし、腕をずっとあげる状態だからしんどいのでは……。
でも家康なら怪我がどこにあるか、感覚で手当てできそうだし、鍛えてるから、腕がしんどくなることもない……?
もしくは、早急に出ていってほしいとか…?
そう思うと、自分がする必要はない気がして、水に手をつけたまま呆然として、顔を俯ける。
「……やっぱり、あんたがして。」
「え……?」
家康の声に反応して、顔をあげると、家康は包帯をとっているところで……
「包帯とかは巻けても、怪我がどういう状態なのかは見えないから。その代わり、頭が終わったらすぐに出ていって。」
「っ……は、はいっ!!」
水につけたままの手を、急いで清めて、薬を持って、家康の背後に回って膝立ちになって、なるべく痛みが走らないように、薬を塗っていく。
薬をが塗り終わって、包帯を巻きながら
「(もしかして、私が落ち込んだと思って、言ったのかな……)」
そうだとしたら、私が知っている家康の優しさが、見えた気がした。