第80章 恋した記憶、愛した事実《1》
長居しては、出産で疲れた香菜が休めないだろうと、武将たちは秀吉の御殿をあとにした。
「この前、あいつらの祝言があったのに、もう子供が産まれたとはな。早いもんだな。」
「身籠ってからの祝言でしたからね。香菜様のお腹が大きくなる前に祝言を挙げさせたいと、秀吉様がおっしゃっていましたし。」
「そういえば、懐妊してないのに勘違いしてたことあったよね。秀吉さん。」
「あ、あったね!懐かしい!でも、その一月後には懐妊してたんだよね!」
あのときは大変だったよね~。と懐妊勘違い話は、今では笑い話になっている。
「そういうお前たちも、祝言挙げるときには懐妊していた。なんてなるなよ。」
「あと一月切ってるんで、それはないでしょ。」
「わからんぞ。陽菜はお前の御殿に行ってから、肌艶が良くなっているからな。」
「な!?///いつもと変わりませんよ!///」
政宗と光秀に揶揄われ、真っ赤になる陽菜。
秀吉と香菜の祝言が終わってから、間もなくして、家康との祝言が決まった。
そして、祝言が決まってから、陽菜の住まいは安土城から家康の御殿に替わり、毎晩……ではないが、家康に愛される頻度は格段に増えた。
「陽菜、明日から家康は視察で不在だ。不在の間は城で寝泊まりしろ。」
「はい!信長様、お世話になります。」
「夜、寂しくなれば、いつでも天主に来い。可愛がってやろう。」
「はぁ!?陽菜、絶対天主に近づかないでよ。」
「行かないよ!信長様も冗談やめてください!」
武将たちは陽菜を揶揄いながらも、その表情は全員が優しい。
めでたい日に、次のめでたい話をしながら、それぞれの御殿に帰っていった。