第76章 お医者さんごっこ part2 家康side ※R18
季節が秋から冬に移り変わろうとしているこの頃。
朝晩は冷え込んでいるが、昼間はまだ暖かい日もある。
今日はまだ比較的暖かく、暖かい陽も部屋に入り込んでいる。過ごしやすい気温のなか、部屋の主、家康は文机に向かって書簡整理をしている。
「…………(すごい視線を感じる)」
何やら不穏な気配を、先ほどから感じていた。
気配を隠そうとしていない、殺意が含まれていないことから、自身に害をもたらす輩ではなさそうだと判断。しかし、何かしらの強い想いが込められている視線。家康も隙を見せることは決してしない。
決してしないのだが……
「……(悪寒までしてきた…)」
あまりの強い視線に、ゾワゾワと寒気がして、腕を擦ると……
……カタン…
「!!」
瞬時に刀に手をかけ、バッ!と音の聞こえた方へ顔を向けると
「家康公、俺です。」
天井の板が外れ、天井から顔だけを出した佐助がいた。
「……何しに来たの。斬られたいの。」
視線の正体がわかった家康。眉間に皺を寄せ、不機嫌全開で佐助を睨む。
「生江戸幕府を見るまでは死ねません。それより……」
音もなく天井から着地した佐助に、さすが上杉の忍。と心の中で家康は感嘆した。
着地した際に少しずれたのか、眼鏡を中指でクイと押し上げた佐助
「陽菜さんは、家康公の医者姿を喜ばれてましたか?」
「……まぁ、喜んでたけど……」
その後は家康自身を求めていた姿に、家康は頬が緩みそうになるのを必死に堪える。
しかし、佐助はそんなことには気づかず
「そうですか。それは良かった。実は今度は家康公に朗報をお持ちしました。」
「は?」
また、眼鏡を中指で押し上げると、今度はキラリと眼鏡を光らせ……
「女医。すなわち女性の医者。女性の白衣姿はとても……そそられますよ…?」
今度は陽菜さんに、家康公の願い、叶えてもらいませんか?