第73章 ~if~『武将の委員会』
パタパタパタパタ……
「これを信長様に渡したら、針子部屋に行かないと……」
世話役兼針子の香菜。
針子の仕事があるため、陽菜程は世話役の仕事を振られることはないが、陽菜が武将達の御殿に向かっているときは、城内での世話役の仕事を任されることがある。
そして、普段は廊下を走らない香菜が、珍しく廊下を小走りしている。
針子の依頼が立て込んでいて、予定より少し出来が遅れているため、世話役の仕事を急いで終わらせ、針仕事に戻りたいからだ。
あそこの角を曲がれば天主への階段に近づく。
気持ち、スピードを上げようとしたとき
「こら!廊下は走るな!」
「っ!!!きゃっ!?」
後ろから注意される声に驚き、足が縺れ、転けそうになる。
グイっ
「おっと…悪い。そこまで驚くとは思わなかった。」
「秀吉さん……」
転けそうになったところを、恋人の秀吉に、腰に手をまわされて助けられた。
「ううん。助けてくれてありがとう。」
「いや。でも香菜が廊下を走るなんて珍しいな。陽菜が走るところは、よく見かけるが。」
そして、もちろん秀吉は、陽菜が走るたびに注意をしている。
「あ、ちょっと針子の仕事がこのあともあって……」
針子の仕事が立て込んでいることを話すと……
「なら、これは俺が信長様に届ける。このあと信長様と話すことがあるからな。香菜は針子の仕事しろ。」
「…いいの?」
「あぁ。その代わり、廊下は走るなよ。」
チュッ
「っ!///」
「じゃあな。」
頭をポンっと撫でられ、秀吉は天主へ向かう。
「…もう……これだけで、心臓鷲掴みとか…ズルイよ…///」
口づけされた唇に触れ、恨めしそうに秀吉の背を見たあと、香菜は針子部屋へ歩いて向かった。