第71章 恋から愛へ《30》
先に荷物を家康の御殿に置き、夕日に照らされながら、手を繋いでお城へ向かう。
「あのね、約束してた薬学の勉強、家康の都合がいいときでいいから、また教えてほしいの。教えてもらってたら、戦だけじゃなくて、普段からいろいろと対応できると思うから…」
「いいよ。また時間があるときに教える。」
「ありがとう。」
嬉しくて繋いでいる手に、キュッと力を入れる。そしたら家康も、キュッと握り返してくれた。
「陽菜」
声をかけられ、家康の顔を見る
家康の足が止まったので、自然と私も止まる。
「…今は、帰る場所が違うけど、なるべく早く迎えに行くから…」
「…家康……」
すごく穏やかな表情で、でも決意が表れていた声。
そして夕日に照らされた家康の顔が、すごくかっこよくて、胸が高鳴った。
「必ず迎えに行く。だからちゃんと待ってて。」
「うん……待ってるね。」
手を離し、隙間がないぐらい、二人は抱きあう。
最初の印象は最悪の二人。だが、徐々に惹かれあい、遠回りをしたけど実を結んだ。
私を守ると言ってくれた家康。
それなら私は、戦がないときの家康の日常を守っていきたい。
今日みたいに出かけたり、他愛ない話をしたり……
ささやかだけれど、なににも代えがたい幸せだから。
「家康、大好き。」
「俺も。愛してるよ。」
愛を囁き、優しく、そして誓いあうように口づけをした。
完