第55章 恋から愛へ《14》家康side
「香菜だけじゃない。俺ももちろん心配している。」
「…秀吉さんも……?」
「あぁ。だけど、信長様は俺のことを信頼してくださっていると信じてる。俺が安土にいるから、信長様たちは心して戦えるんだと。
それに、幸運を呼び込む女がいるんだ。信長様達が負けるはずないだろ。」
香菜の頭を優しく撫で、秀吉は、ほんの少しだけ笑みをこぼす
「秀吉さん…そうだね。」
香菜もつられ、少しだけ笑みをこぼした。
「それと、もう一人、信じてやれよ。」
「もう一人?」
誰?と、香菜が首を横に傾げる。
「可愛い可愛い妹が戻ってくることだ。」
そう言うと香菜は目を見開き、じわじわと涙が溜り始め、
「……うん。信じる。……だから、秀吉さん、ちゃんと守ってね。私のこと。」
「あぁ。ちゃんと守るよ。」
「(今回だけじゃなく、香菜のことはずっと守る。)」
秀吉は香菜の目尻に溜まる涙を、指で優しく拭った。