第44章 恋から愛へ《3》家康side
「…流石に今のは近いな」
「そういや軍議が始まって、しばらくしたら降ってきたな。」
「今の近さだと、どこかに落ちたんじゃないですか?」
「あとで城下を見回るか。政宗、続きを頼む」
秀吉さんの声かけで、軍議を再開しようとしたとき
バタバタバタ…!
誰かが廊下を走る音が聞こえる。
「誰だ。廊下を走るやつは…」
秀吉さんが眉間に皺をよせて立ちあがり、襖の方へ歩いていく。
「……お願いします!開けてくださいっ!」
「だ、駄目ですっ!今は軍議中で…」
襖の向こうから家臣と誰かの言い合う声が聞こえる
スッ…
「どうした。香菜?」
秀吉さんが襖を開けると、珍しく焦った様子の香菜の姿が見えた。
「秀吉さんっ!陽菜は!?陽菜どこに行ったか知りませんか!?」
秀吉さんの着物を掴んで陽菜の居場所をすがるように聞く香菜
「落ち着け。陽菜なら城下に行ってる。ちょっと遣いを頼んだんだ。」
香菜の肩を掴み、落ち着いた声でそう話す秀吉さん。
だが、香菜の顔はみるみる青ざめていき
「城下……それ、どのくらい前、ですか…?」
震えた声で秀吉さんに問うと…
「?軍議が始まる前だから、四半刻経ぐらい前に城下に行ったが…それがどうかしたのか?」
秀吉さんの答に香菜は目を見開き、足の力が抜けたのか、その場に崩れ落ち、
「うそ………陽菜、帰っちゃった、の……」
香菜の涙混じりの声が耳に届いた。