第38章 想い溢れる恋《9》
「秀吉さんっ…!?///なんでっ…」
秀吉さんにキスされたところが、ジンジンと熱を帯びている。
「…宴のことは、あまり覚えてはいないが……香菜に可愛いって言ったことは覚えている。
酒が入っていたから、信じてもらえてないだろうと思って、普通のときにちゃんと伝えたかった。」
ギュッと私の手を秀吉さんは握って、
「俺の傍にいてくれないか?」
「…っ」
想いを伝えてくれた。
目の奥がツンとして、ジワジワ涙が溜りはじめた。
傍にいたい
私も好きって言いたい
でも……あと二月で帰らないといけない。
秀吉さんの気持ちがどうしようもなく嬉しいのに、『好き』の二文字が言えない。
「秀吉さん、気持ちは嬉しいんだけど……」
涙を見られないように顔を伏せて、ギュッと目を閉じる。
私の手を握っている秀吉さんの手の上に、自分の反対側の手をそっと乗せ、
「(ごめんなさい……私も好きです…)」
言えない想いが伝わるように、秀吉さんの手を握る。
「……そうか。聞いてくれて、ありがとな。」
秀吉さんは反対の手で私の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「針仕事中に悪かったな。無理はするなよ。」
優しい声をかけてくれ、手を離して、部屋から出ていった。
パタン――――
襖が閉まる音を聞いてすぐに、私の目から堪えていた涙が零れた。