第34章 想い溢れる恋《5》
「え?」
どういうこと?
「…あいつらは…俺が人質として預けられていた今川家の武士たちなんだ。」
「ひと、じ、ち…?」
「そう。俺は子供のころから、自分の国を守るために人質に出されてた。織田家にいたときもあって、信長様とはその時からの付き合い。
…けど、織田家をすぐに出ることになって、その後は成人するまでの長い間、今川家の人質として過ごしてた」
(…そうだったんだ…)
「でも今川家は信長様に滅ぼされて、俺は信長様と同盟を結んだ。だから、今川の生き残りからしたら…俺のことは裏切り者に見えたんだろう。」
「(そういえば、拐われそうになったとき、家康と信長様を誘き出す。とか言ってた…)」
「でも、なんで、わだしが…?」
狙われるの?
「……あいつらは野党のふりをして、俺と信長様を引きずりだそうとしてた。
俺の御殿を見張っていたら、陽菜が一人で出てきたところを見てたんだ。身なりが女中に見えなかったから陽菜を拐えば、俺たちを引きずり出せると思って狙いを陽菜にした。
……だから…陽菜が狙われたのは、俺のせいなんだ。」