第21章 近くて遠い恋《8》
「完全に私の一方的な片思いだけどね!家康は、私のことなんとも思ってないし」
「…そう?」
「うん。仕事で仕方なく勉強も看病もしてくれただけだし!手の掛かる教え子って思ってるんじゃない!」
自分で言ってるくせに、かなり傷つく……
「……だから、昨日の宴前に落ち込んでたの?家康さんに仕事って言われて……」
「うん……でも!例え仕事でも、感謝はほんとにしてるから、お礼はやっぱりしたくって!」
「そっか…。じゃあ頑張って御守り縫おっか!見栄えが悪くても、気持ちを込めて縫ったら、ちゃんとその気持ちは伝わるから。」
「うん!」
気持ちを切り替えて裁縫を再開した。
何度も針を指に刺したけど、それでも一針一針、感謝の気持ちを込めて、御守りを作る。
お姉ちゃんの指導のもと、先ほどより、いくらかマシな出来になったが、それでも少しガタガタになっていた。
『山吹色の御守り』
明日会ったときに渡そう。