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真鍮の寂び(銀魂:銀時夢) 注:非恋愛

第1章 真鍮の寂び


働くことを億劫に思う銀時にとって、お登勢からの仕事の紹介は果てしなく面倒臭い。

まず第一に、お登勢を通した依頼者はほとんどが彼女の友人や知人である。それが意味するのは単純明快で、銀時の適当な仕事っぷりがお登勢に直で伝わってしまうのだ。最終的に依頼はやり遂げるものの、それにいたるまでに起こしたミスやトラブルは筒抜けになり、あとでお登勢から説教をもらう可能性が高い。

そして第二に、ほとんどのケースで依頼料がお登勢の元へ奪われてしまう。もともと家賃を滞納しがちな銀時。大抵お登勢から仕事の紹介がくるのは、いつまで経っても未払いな銀時に嫌気がさした時である。優先的に仕事の報酬が家賃の支払いへ宛行われるのはもちろん、お登勢と依頼人の間に連絡も頻繁に行われるので、どれほどの依頼料が渡されているのかも把握されている。つまり数字に誤魔化しがきかないのだ。

依頼人からも同時に紹介料をもらっているはずなので少しお金をちょろまかしても許して欲しいところだが、そんな銀時の願いはお登勢に届いたことはない。きっちりもらうべきものはもらう、それがお登勢だ。結果、大金をもらう仕事をこなしても銀時の手元に残る金額は雀の涙ほどである。そもそもを考えると家賃を滞納した銀時の自業自得なので同情の余地はないのだが、少なからず銀時には気が進まない理由は揃っていた。

それでも渋々とはいえ仕事を引き受けるのは、恐らく仙望郷での一件があったからであろう。働く意思を見せず、のらりくらりとお登勢の要求を蔑ろにすれば、以前のように「冬休みを利用して秘湯に浸かってこい」と騙されてスタンドと働かされる事態になりかねない。そんな最悪の事態を防ぐには適度に働いてお登勢を満足させるのが賢明だと学んだのである。その教訓のおかげかどうかは分からないが、以来、仙望郷のような無茶苦茶な仕事は言い渡されなかった。

それを踏まえたある日の早朝、銀時は前日にレンタルしてきた幌付きの1tトラックでかぶき町を乗り去った。今回の依頼はお登勢の古い知り合いであり、職業は画家だそうだ。何やら西洋風の絵を描いたり、全国の若い芸術家たちに西洋画の歴史を教えたりして回っていたらしい。その業界ではそれなりの有名人らしいが、名前を聞いても銀時にはピンとこなかった。
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