第2章 日常の中の幸せ
ー方、マスタングにお昼をご馳走されているアイリーンは、というと?
「もう、ジャンの奴!ゴミ出し当番だったんですよ??でも、毎回、私が捨ててるんです!あのバカっ」
パンを、頬張りながら文句を聞いてもらう。そんな、彼女を見てマスタングは、笑い出す。
「なんですか?」
「いや、羨ましいなぁ。と思って」
「羨ましい?」
「ハボックが羨ましいな。と、思ってな。こんな、美女とひとつ屋根の下で、暮らしているなんて」
「美女?こんな顔しててもですか?」
あからさまに、イライラオーラを放ち持っていたパンが、グシャッと潰れた。
「やめなさい」
「はぁい」
「それにしても、不思議だな」
「?」
アイリーンは、首を傾げる。
「なんで、そこまで文句を言いながらも彼と付き合っているんだい?」
「そ、そりゃあ…幼馴染みだし…」
「それだけ?」
潰してしまったパンをオボンに、乗せてから少しだけ悲しそうに、口を開いた。
「私の両親…戦争で亡くなったんです。その時から、私ジャンの家に引き取られて、凄く良くしてもらって…」
「それで?」
「彼が、両親の、お墓の前で誓ってくれてんです『俺は、何がなんでもお前より先には、死なない。お前を離したりしない…約束する』」
「いつも、チャラチャラしてて何考えてるかわからないけど…やる時は、やる男です」
アイリーンの話を聞いたマスタングは、嬉しそうに、微笑んでいた。
「惚れているんだね」
「はいっ」
「後ろを向いてごらん」
「え?」
ふと、出口の方を向くとそこには申し訳なさそうに、彼女を探しているハボック。
「行ってきたらどうだ?私なら、大丈夫だ」
「ありがとうございます」
アイリーンは、彼が待つ出口までかけた。そのまま、ハボックに抱き着いた。そんな、アイリーンの心底幸せそうな笑顔を見て、マスタングはやれやれといった表情を、浮かばせた。
「大佐」
「中尉どうした」
マスタングの前に、腰を下ろしたのはシルベットだ。滅多に、食堂に来ない彼女が目の前に現れた。
「ご飯たまには食べようかなて」
「ホワイトシチューだが、食べるかい」
あーん。と、出されたスプーンパクリと、食べるシルベット。
「美味しいです!」
彼女の人間らしい笑顔を見た時、マスタングは、これもまた幸せだと感じるのであった。