第1章 始まりは、クリスマスから。
アメストリス国中央、セントラルシティ。アメストリス国の中心部でもあのこの場所も、恋人たちが喜ぶクリスマス。街には、サンタの格好をした女の人たち、そして美しいイルミネーションが輝いていた。そんな中、鼻の頭を赤く染めて腕を組むハボックと、金髪の長い髪をポニーテールにしたすれ違う人たちが、振り返るほどの美女『アイリーン』
「ゔえっくしょん!」
ハボックが、豪快なくしゃみをする。
「オッサン丸出しのくしゃみね」
思わず、アイリーンは苦笑する。
「あー、さみぃっ」
「一応、仕事中よ?」
「へいへい」
はぁ。と、白い息を吐くハボック。そんな、彼を横目で愛おしそうに見つめてから、アイリーンは、彼の手を取り握り締めた。
「ホラ、温かいでしょ?」
「おいおい、良いのか?一応、仕事中だぜ?」
「良いの。あ、ヤドリギ!」
街灯の飾りである、ヤドリギを見つけたアイリーンは、嬉しそうにそれを指さした。
「ヤドリギの下の男女は、キスをするのよ?」
「ヤドリギの下じゃなくてもいいじゃねぇか」
「え?」
彼女の、手を引っ張り抱き寄せ頬に手を添えたハボック。ひんやりと、冷たい。
「お前、冷たいぞ?」
「だって…寒かったから」
2人の顔が段々と近づいて、唇が重なる寸前。
ーコホン
と、咳払いに思わずハボックとアイリーンは、大袈裟に距離を取った。
「アイリーン…今、勤務時間中でしょ。何で、軍部に戻ってこないの?大佐が、怒ってる」
膝までのブロンドヘアーを、三つ編みしていて紅い瞳と、人形の様な容姿のこの女性は、シルベット中佐。3人は、謎の川の字で、クリスマスの街を歩いていた。
「シルベットちゃん♡さっきのキスのこと、大佐には…」
「勿論、報告します」
「ですよね」
ガクンっ。と、あからさまに落ち込むアイリーンを見て。 彼女は、内心。
ーあ、コレ大佐に叱られる。今日中に、帰れるかしら…。
と、嘆いていた。
ハボックは、いつも真面目過ぎるシルベットを見て、まるで自分の妹の様に思っていた。
「まぁ、怒られるのもまた一興さ。たまには、息抜きでもしろよな」
いつも、無表情な彼女だが、この2人相手には、どうも調子が狂う様だ。
「そーね。寒い!早く、軍に帰りましょ」
シルベットと肩を組みながら、3人は軍部へと帰った。