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外科医・牛島若利

第1章 執刀後の情事


全ての工程が終了し、牛島先生が終わりを告げる合図を送る。
5時間を超える手術…それでも短く済んだ方だった。

血液の付いた手袋を外し、顔を覆っていたマスクを外すと牛島先生がギャラリーを見上げる。
その片隅に立つ私を捕らえると、スッと手を上げ、私は彼に微笑みを投げて、ギャラリーを退室した。


私が向かう場所は…彼専用の部屋。
診療棟の最上階、牛島先生や木兎先生のような優秀な医師らの部屋が並ぶ。
当直などにも使用されるその部屋は、暗証キーを打ち込まなければ開かないシークレットゾーンである。

牛島先生の部屋へ向かう途中、また木兎先生に遭遇するハプニングはあったものの『頑張れよっ!』と意味不明の声援を送られて事なきを得た。

彼の部屋の前に立ち、不在の札をチラッと見てから暗証キーを押せば、カチャっと開錠の音が耳に響き、静まり返った部屋の中へ入る。
この部屋にベッドはない。
大きなソファーと仕事用の机やパソコン、必要な本と家具が整然と並んでいるだけで何の面白みもない部屋ではあるが、私はここが好き。

スッと大きく息を吸い込むとカチャと再び開錠の音が響く。
ドアが開けられると同時に振り返れば、たった今仕事を終えた部屋の主が戻ってきた。

「お疲れ様です」

そう言って迎え入れると、彼は私を包み込みいきなり深い口付けが与えられる。

彼曰く…大きな手術の後は、身体が興奮しきっているらしい。
だから、必ず大きな手術の後はこの部屋で…と約束をしている。
既に彼の興奮が伝わってくるし、もちろん私自身もあの華麗な手術に興奮していた。
絡まる舌が甘く強く深く…どんどん抜けていく力…牛島先生に誘われ、背後にある大きなソファーに身体を沈めた。

「今日の俺は、どうだった?」

唇を離した牛島先生がネクタイを緩めながら問いかけ、私自身も着ていたシャツのボタンを外しながら彼を見つめ上げる。

「素敵でした…とても」

その言葉の終りと同時に再び口を塞がれ、脱ぎかけたシャツが無駄に手に絡まり上手く彼にしがみつけないまま、胸を包み込まれた。
優しさも含まれた彼の愛撫が私を翻弄する。
既に興奮が高まっている状態で絡まり合う身体は、すぐに熱を帯び私の下半身は止まる事を知らないとでもいうかのように潤いを増していった。
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