【跡部】All′s fair in Love&War
第33章 おわりのそのまえに(後編)
「あとはね、例えば松元と帰れなくて寂しそうな顔も、それで跡部にイライラしちゃってる顔も、好きだよ。でも一番は、ジロちゃんって呼んで、笑って起こしてくれる時の顔」
耳元でそう囁くと、それが刺激になったのか、中がぎゅっと締まった。そこで俺も堪らなくなって、速度を上げる。
「どんな時の守河の顔も好きだから、さ、嫌いな時が無いんだっ…困っちゃう、よねっ」
「あっ、ジロちゃ…っ!そんなにしたら、」
「いー、よっ…俺も、もう、すぐだしっ…」
肌の触れ合う音と、俺の荒い息遣いと。守河の甘い声だけが響く部屋の中、ぐるぐると今までの事が巡って、また泣きそうになる。
勘違いしててごめんね、って気持ちと、勘違いは果たしてその通りだったんだとしても、もういいや、って気持ちと。守河が松元の事が好きだったのは紛れもない真実で、でも俺の存在がそれを上回っちゃったんだとしたら、なんて光栄だろう――
そんな甘美な妄想に囚われている間に、お互い絶頂に近づいて来たようで。俺の腰はじわり、と疼き、守河の中は益々締まって、俺を追い詰める。
「あっ、あっ、やぁっ…ん、ジロちゃんっ、ジロちゃんっ」
思えば、守河はいつだって、絶頂の間際には俺の名前を呼ぶんだ。これってもう、本当に自惚れてもいいんじゃないの?
「あ、あ、ジロちゃんっ…好き、ほんとに、すきっ…!!」
「っっ…!!!」
不意打ちの好き、はそれ迄とは全く違って、すとん、と胸に落ちてきた。それと同時に俺は逝ってしまって、しかし駄目押しで最奥をつくと、守河も一層身を震わせ、果てた。
「守河、大好き」
ずっとずっと、好きって言いたくて、でも困らせたくないって、押し込めてきた。そんな万感の思いが、伝わってしまったのかもしれない。守河がぼろぼろ泣くもんだから、耐えきれなくなって、俺までまた泣いてしまった。