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【跡部】All′s fair in Love&War

第25章 アンコンディショナル・ラブ(中編)




急いでクラスに戻り、カバンを取って。声をかけてくれたクラスメイト達に、おざなりな挨拶もそこそこに、また駆け出す。やはり私にとってテニス部とは特別な場所のようで、高揚感に包まれたまま校舎を走り抜ける――途中、ふと思い当たり、立ち止まる。スマホを取り出し、メッセージを送る。


「お疲れ様、もうみんな、部室に集まってるよ、と」


跡部に宛てたそれを、何処か祈る様な気持ちで送信する。そしてまた駆け出そうとした瞬間、意外と早い応答を知らせる振動が、ポケットの中から伝わる。――わかった、とそれだけの返信に、酷く安心して、今度こそ部室に向かって駆け出す。

跡部と自分の間の細くか弱い糸は、まだ絶たれて居なかったのだ。いつも通りなら、帰りは一緒になるはず。そこで今までのお礼を言って、また戻ってきたらよろしくって、ちゃんと言うんだ――先程までより随分晴れやかな気持ちで、部室のドアを勢いよく開ける。


「おまたせ、みん、な…?」


もうとっくに、自分と跡部以外のメンバーが揃っていたらしいそこは、いつもの騒がしさが嘘のように静まり返っていた。それどころか、何処か暗いムードが漂う。ひとまず部屋に入り、ドアを閉めると。何処か思い詰めたような表情の宍戸が、ゆっくりと口を開く。


「松元…留学、行くんだってな」

何故それを、と問いかける前に。がっくんの叫ぶような声が部屋中に響き渡る。

「掲示板に貼ってあったんだよっ、留学の試験に合格したって…」
「この前、高校でも一緒に全国行こなって話したばっかやん…なんで黙ってたん?」

忍足の珍しく沈んだ声に、心が締め付けられる。ちょたは、目一杯涙を溜めて、こちらを見ている。ヒヨは、睨みつけるような表情で、返事を待っているらしい。茉奈莉ちゃんとジロちゃんは、みんなの様子にどうしたものか、困っているようだ。


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