【跡部】All′s fair in Love&War
第22章 一年の計は元旦にあり
それからまた歩き出した私達は、漸く拝殿に辿り着き、一緒に手を合わせた。
「あとべ、今年のお願いは?」
「決まってんだろ、アーン。全国制覇だ――わざわざ神に願わなくても、自分で叶えてみせるがな」
「ふふ、そーだね。期待してます」
お前は?と目で問われる。
「あたしは、勿論学業成就!と、氷帝必勝、かな」
あたしの返事に、少し訝しげな跡部。そうだった、去年までは、全国に行けますように!とか言ってたっけ。自然とこの先の話が出来なくなっている自分を誤魔化すように、みんなを探そ!と笑うと、跡部もそれに従いまた歩き出す。なんとか怪しまれていないようで、バレないようにそっと息をつくと、目の前が白く染まった。そう言えば、寒い事もすっかりと忘れていた。
ずっと黙っていたスマホがぶるり、と震える。画面を見ると、茉奈莉ちゃんからのメッセージ――跡部に言えた?、と。元々言うつもりもなかったけれど――無理でした、なんてションボリした顔のスタンプと一緒に送り返す。
きっと、跡部はギリギリまで黙っていたことに怒ってくれるだろう。それは、今までの三年間が作り出す自惚れ。そして、一人になっても頑張れる意義。隣を歩く自信を手に入れる為の、矜持。
もしかしたら、離れている間にこの場所は無くなっているかも知れない――だとしたら、それまでの事。一人の時間を経て、強くなった私は、きっと笑って言える――跡部の一番の女友達は、私なんだからね、と。
鳥居の近くに皆の顔を見つけて、二人の時間の終わりを感じながら、一歩ずつ噛み締めるように進む。あとべにありがと、とお礼を言おうとして、何のだろう?と自分でも不思議に思って、止めておいた。
お礼なんて、言い出したらキリがないから、取っておくことにしよう――ホントのほんとに、最後の、その時に。